皆さま、こんにちは!
前回に引き続きBlackmagic Design Pocket Cinema Camera 4Kこと
ポケシネ4Kの受け入れ準備の話です。
前回は主に機材のこと(まだ書き切れていない事があるのですが)を中心に書きましたが
今回は撮影よりも大事な「編集環境」の話を大きく4つシェアしていきたいと思います。
そして最後の「マスモニ環境の構築」こそ、我々がきっちり準備しないといけないものだと感じています。
ぜひご一読ください。
=編集環境=
①DaVinci Resolve15を勉強しよう BMPCC 4K (以下ポケシネ)には「DaVinci Resolve Studio(以下DR)」 つまり有償版が付属してきます。(1つで2台まで動作) 有償版は普通に買っても3万5千円くらいしますから、
これがカメラについていくるなんて本当に太っ腹です。 ↓画像クリックでDR15のサイトへ飛びます
さてさて、編集ソフトとしてもかなり成熟してきた現行のDR15は
VFXができるfusionを追加し、14から追加されたMAソフト Fairlightと合わせて、
本当にDR一本で映像制作の全てが完結できるようになってきました。
編集はFinalCutProXやPremierを使ってカラーグレーディングをDaVinciで、
という方は今でも多いと思いますが
BMPCC 4KのRAWの収録フォーマットはRAWかProResの2択であり、
RAWデータは「Cinema DNG」です。 FCPXでは現状Cinema DNGは読み込む事はできないため、
FCPXで編集するとしたらProResで収録するしかないわけですが。
せっかくのRAW動画元年にProRes収録というのはナンセンスです。(状況によります)
現状FCPXでRAWデータを使う場合はDRで「現像」して、
ProResなどのフォーマットにデリバー(書き出す)する必要が出てくわけです。 DRでは「クリップをひとつづづ」書き出す事ができるので、
RAW素材の現像処理を最初にしてしまえばいいと割り切れればいいのですが
動画編集をしている方なら、作業しながら色をいじっていきたいと思うのが自然だと思います。 であれば、はじめからDRを使った方が正直作業効率が良いですよね。
ちなみにPremiereではCinema DNGは読み込む事ができます。 しかしここに落とし穴があります。
BMPCC 4KはRAWの収録フォーマットCinema DNGを
「ロスレス圧縮」と「3:1」「4:1」(BMD独自の圧縮CinemaDNG)が選べますが Premiereではロスレス圧縮のCinema DNGは読めても、「3:1」や「4:1」はDRでしか読む事ができません。
そして何より「ロスレス圧縮」と「3:1」では同じメディアへの収録時間が倍以上違います。 256GBのCFast2.0カードでDCI 4KのCInema DNGが約16分、「3:1」で約33分。
その上、画質面でもBMDの「3:1」は「ロスレス圧縮」に比べても遜色が無いとの事。
(知り合いのURSA Mini ユーザーが口を揃えて言っています)
で、あれば誰しも収録容量を少なく抑えたいと思います。
ここまで言えばわかりますよね?
昨年PRORNEWSの記事などでも書きましたが
DaVinci Resolveは「必修科目」になったのです。
(学生たちがこれを使いこなす未来、我々おじさんもやらないと駆逐されてしまいます)
特にRAWは「センサーで捉えた 何もいじられていない 生のデータ」であり、
ノイズリダクションもされていない状態で記録されるので
ポストでのデノイズ作業は必須になってきます。 (だからDaVinciのデノイス機能が優秀なわけなのです)
※デノイズ機能は無償版では使用できません
RAWでなくLogデータを扱うひとにとっても
DRは使えるようになっておいて損は無いのです。
またDR StudioはFCPXのような「買取式」なので
追加料金がかからず、アップデートに対応してくれるのもポイントです。
(Adobeのような月額使用料が無い)
↓ 映像は「どう表現するか・どう見せたいか」の時代へ突入しています
②DaVinciが動作するPCを用意しよう
というわけで、これからRAW動画を編集する方は 最低限DaVinci Resolveが動作するスペックのPCは用意しておくことが必須となります。
DaVinciはMac/Win/LinuxとOSは問いませんが、共通して言えるのはGPUが命です。
※X-AVCなどを走らせる際はCPUも必要になってきますが。。。
またDaVinci Resolve Studio(有償版)は複数のGPUを使用することができるため
Macよりも自作できるWinが有利と言えば有利です。
私はMac環境のため、現在iMacPro(GPU:Vega 16GB)をメインに
MacBookPro 15inch(2017年モデルGPU:Radeon Pro 560 4GB)を
使用しています、デノイズなど負荷がかからない作業であれば、4K60p素材を
iMac Proでも サクサク、とは言い難いですが、特に問題無く使用できています。
これから編集環境を組む方は「扱うフォーマット」「扱う解像度」「扱うフレームレート」その上で
「どういう作業をするか」を明確にして構築すると良いでしょう。
でも、強力なデスクトップマシンを買うお金なんてないよ! macじゃGPUの換装ができないからWinに買い換えなきゃいけないのかな?
って方も多いと思います。
そんな貴方にオススメしたいのが
先日Blackmagic designから発表されたeGPU(external GPU)です。 その名の通り「外付けのGPU」です。
Thunderbolt3接続に限りますが、これを接続することで8GBのビデオメモリにすることができます。
例えばTB3を搭載したMacBookProの13インチが
eGPUを接続することで現行のiMac 5K と同等のGPU性能になるということです。
Macユーザーはわずかな投資でラップトップをデスクトップ並みに ブーストアップすることができるわけです。
※DR Studioは前述の通り、複数のGPUを使用できますが、同じ容量のビデオメモリで無いと効果が無く、
4GBのものと8GBのものを同時に使用すると、低い方(4GB)に合わせてしまう仕様なので注意。
複数のGPUを使用する場合はeGPUを2台用意して並列に走らせるとかなりのスピードアップができます。
とにもかくにもeGPUが搭載している「Radeon 580(8GB)」以下のGPUのマシンであれば
eGPUというのは手持ちのMacをPower Upさせる一つの選択肢だと思います。 ※PRONEWSでeGPUの記事を書いていますので、そちらも参照ください
ちなみに最新のMacBooKProはeGPUに最適化されていて
クラムシェルモードでeGPUを接続する事で結構なパワーアップが計れるとのことです。(知人情報)
③最低でも500MB/sの大容量・高速ストレージを用意
これはずっと前から言っている事ですが 4Kの動画データは容量が大きく、速い転送速度が求められます。
ProResと比べてそこまで重くはないとはいえ、4K RAWデータを扱うのであれば、
やはり高速・大容量の編集ストレージが無ければ何もできないません。 たまに単発のHDDや外付けの4TBのHDDをUSB3.0接続でどうにかなりませんか?という方も
いますが、正直無理です。
ご存知の通り、私はG-technologyのShuttle XL(64TB)を普段から使用しています。
転送速度は読み書きともに平均800MB/sと4K30p程度なら問題なく作業できる速度です。
過去の経験からも4K30p前提であれば最低でも読み書き平均500MB/sくらいは欲しい印象で、
4発のHDDでRAID0を組めばこの辺りの速度は確保できると思います。 RAID5で速度を確保するならHDD 6発でのRAID それ以上なら8発、と
欲しい速度に対して準備すると良いです。
自作でも構いませんが、大事な編集データを扱うHDDだからこそ、 サポートがしっかりしているメーカーを選ぶことをおすすめします。 ストレージはいつか壊れるもの、ということを認識して、 こまめのバックアップと3~4年に1度ストレージの入れ替えは必要になる事を
覚悟してください。ストレージの出費が映像制作ではどの時代もついて回ります。
ぶっちゃけた話3年に一度はストレージの交換で数十万はかかると思っていても
間違いありません。そういうもんです。 編集環境について詳しくは過去ブログを
④マスモニ環境を整えよう
最後は「マスターモニタリング環境」です。
そう、カラーグレーディングを行う人が増えてきましたが、
あなた本当に「正しい色」で作業していますか?という話。 実はこれが一番大事だったりします。
↓ 私の現在の自宅マスモニ編集環境(iMacPro + BENQ PV270)
Web動画全盛で、動画制作の人口が増えた今、
アウトプットがテレビ前提で無くなった事もあり、
マスターモニター無しで映像を制作している人が多いと思います。
そういう私もマスモニの必要性はわかったつもりでいたものの、
「Web視聴前提だし」「なにが基準かなんてわからない」という
都合の良い言い訳をしながら、ソフトウェアキャリブレーションは行いつつも、
恥ずかしながら目をつぶっていました。
ただこれから「RAW」動画が普通になり、誰しもが「色」で演出する時代です。
「何を基準に色をいじっているのか?」はとても重要になってくるのです。
正しいガンマで、正しい色を基準としたモニターでこそ
豊富な色情報を持つRAWデータを弄る事に意味があります。
特にセカンダリグレーディングで細かい「こだわりの色の演出」を加えたのに
いざ自宅以外のモニターで見たら、全然色が違う、って事があり得ます(実際あります)
結局マスモニという「正しい物差し」がないと、
「表現」のためのカラーグレーディングの意味も何も無くなり、
Rec709はもちろん、これからRec.2020がスタンダードへと変わっていく中、
色域の事を学ぶ必然が多い今だからこそ きちんとしたモニターを導入することを勧めたいと思います。 特にショートフィルムや映画祭などが盛り上がっている今、
劇場用に合わせた色域(DCI-P3)で作る際など必須ですよね? 私も現在iMacProのモニターもキャリブレーションして使用していますが
全体的にMacのディスプレイは「いい感じ」に見せてくれる傾向があります。
ソフトウェアキャリブレーションを行って使用しているものの、 大きく色の方向が違ったりする事はないのですが、少し彩度が高い印象です。 証拠にiMacProでグレーディングした画を、キャリブレーションされたマスモニ(Rec.709)で
確認したところかなり彩度が強くなり、全然作りたかったイメージとは程遠く、
改めてグレーディングをし直しました。
①ソフトウェアキャリブレーションしたMacでグレーディング
②Macでグレーディングした画をマスモニ(rec.709)で見たらこうなった(彩度高く、マゼンダが強い)
③マスモニでカラーグレーディングをし直した(作りたいイメージになった)
Web動画全盛の今、視聴環境はまちまちですが、
だからこそ自分の編集環境で作った色が「正しい」事が
クライアントワークにも作品作りにも重要となっていくわけです。 過去にクライアントがプレビューで見ているモニターの発色がひどくて、いつまで経っても
色補正の指示が終わらなかったのですが こちらがマスモニに準じて作業している、という事実は
とても重要な事になります。 マスモニの重要性が分かった所で さぁ、それではどんなモニターを買えばいいでしょうか?
マスモニを導入するならば「ハードウェアキャリブレーション」ができるモデルをオススメします。
メジャーなところでEIZOのCG248-4K / CG319X 、
最近発売された BENQのPV270などは ハードウェアキャリブレーションが可能なモデルです。
モニターのキャリブレーションの必要性についてはEIZOさんのWEBがとてもわかりやすいです https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/color_management/calibration/
一般的なモニターはキャリブレーターを使用した 「ソフトウェアキャリブレーション」でキャリブレーションが可能です。
↓ X-rite社のi1 DISPLAY
↓キャリブレーターとソフトウェアでキャリブレーションを行う
しかしソフトウェアキャリブレーションでは
ビデオカードそのものの出力を減らすことで目標設定した色表示を行うだけ。 つまり出力の調整になるので階調の減少や色つきが現れる場合が多いことに対し、 ハードウェアキャリブレーションはモニターの表示自体を調整するため
階調の減少がほとんど起こらないのです。
とはいえ、ハードウェアキャリブレーションができるモニターを購入しようと思うと、
正直その価格につまずくのも正直な所です。 特に映像用途で4Kモニターを買おうとすると
結構なお値段で、必要と分かっちゃいても、カメラやレンズを買ってしまうのも仕方ありません。 いきなりモニターに何十万円もかけることができる人がいるのは僅かだと思います。(私だってそう)
今回ポケシネ4Kと一緒に導入してもらいたいエントリーマスモニとしてオススメしたいのが、 私も使用しているBenQのPV270です。 前述の通り、BenQから7月に発売された映像編集用ディスプレイモニターなのですが、 そのコスパ感がすごいのです。 ↓ BenQ の映像編集用ディスプレイ PV270 サイズは27インチで昇降・回転可能
↓ 遮光フード付属
↓質感もなかなか
↓ボタン類はタッチセンサー式
実売約10万円ながら、遮光フード付属。
AdobeRGBカバー率99%、DCI-P3 96%、sRGBカバー率100%
バックライトセンサー搭載で起動からわずか5分で安定 ムラ補正回路搭載でユニフォーミティの均一化 (モニターの画面全域の輝度と色合いを均一になるように補正する)
ハードウェアキャリブレーション対応 (キャリブレーションソフト「Pallete Master」が無償で付属ですがキャリブレーターは別途必要) 10bitカラーディスプレイ・14bit 3D LUTを採用しているので
全ての色空間での色再現が可能
(映像の情報を一度14bitとして展開した上で10bitモニターに表示するので正確な色表現ができる)
自分が校正したプロファイルを含め、Adobe RGB・sRGB・DCI-P3・Rec.709・D50・D65と、
るカラーモードをモニターのボタンから選択できます。 写真も動画も編集する人に最適かもしれませんね。
面白いのはPinP やPBP(picture by picture)ができるので、 色域違いでの映像比較などができるのが便利です。
↓PBPで Rec.709(左)と DCI-P3(右)を同じモニター内で同時に表示
上記写真は「DCI-P3」と「Rec709」の比較。わかりにくいかもですが
若干DCI-P3の方が彩度が少し薄く、色味がシアンっぽい感じに見えると思います。
また、PV270の魅力は
Full HD リアル24pプレイバックもサポートしているのと、
解像度がWQHD(2560 × 1440)と4Kモニターではありませんが、
GPUに負担をかけない解像度というのも入門機としての魅力です。
ラップトップのクリエイターも増えている昨今、 自宅でモニターにつないで作業するならこのBenQのPV270はオススメかと思います。
MacBookProユーザーであれば、前述のようにeGPUとこのPV270の組み合わせであれば
下手なデスクトップを買うより良い環境が構築できちゃったりします。
↓ MacBookPro 15 + eGPU + BenQ PV270(with Blackmagic design Ultra Studio 4K)
DaVinciのカラーページはフルスクリーンプレビューをした状態でグレーディングするのが
最高に作業しやすいものです。
なにはともあれPV270が気になった、そこの貴方!
次回はこのBenQ PV270を使用した
ミニマルマスタリング環境をご紹介したいと思います。(こうご期待)
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